行政書士の顧客管理ソフト比較|Excel・既存ソフト・SaaSの費用と「期限管理」対応状況
「行政書士 顧客管理 ソフト」で検索すると、汎用CRMの紹介記事ばかりが出てきます。しかし行政書士の実務で本当に事故が起きるのは、顧客情報の管理ではなく許認可の期限管理です。建設業許可の5年更新、毎年の決算変更届、経審の1年7ヶ月、産廃の5年。これらを取りこぼしたときの損害は、名刺情報の重複どころの話ではありません。
この記事では、行政書士が顧客管理に使える選択肢(Excel/汎用CRM/kintone/士業専用ソフト)を費用と機能で比較したうえで、「どの選択肢が期限管理までカバーできるのか」を実務目線で整理します。
なお、筆者は行政書士向けの期限管理SaaS「許認可期限レーダー」(開発中)を運営する立場です。その前提を明示したうえで、比較は公式サイトで確認できる情報に基づいて公平に行います。
行政書士の顧客管理、何を管理すべきか(案件・書類・そして期限)
一口に「顧客管理」と言っても、行政書士事務所が管理すべき情報は3つの層に分かれます。
- 顧客基本情報:商号・代表者・所在地・連絡先・決算月・保有許認可。名刺管理やCRMが得意とする領域
- 案件・書類・帳簿:受任案件の進捗、作成書類、請求・入金、そして行政書士法上備え付けが義務付けられている帳簿(事件簿)。士業専用ソフトが得意とする領域
- 期限:許認可の更新期限、決算変更届・事業報告書などの年次届出、経審の有効期間の切れ目。どのカテゴリのソフトも主戦場としてこなかった領域
1と2の管理が崩れても、失うのは主に効率です。しかし3が崩れると、顧客の許可失効・営業停止、損害賠償、事務所の信用問題に直結します。逆に言えば、期限は「確実に発生する次の受注日」でもあり、更新・年次届出という反復収益の源泉です。ソフト選びでは、この3層のうち自分の事務所にとってどこが本当のボトルネックかを先に決める必要があります。
選択肢の全体像:Excel/汎用CRM/kintone構築/士業専用ソフト
1. Excel・スプレッドシート
もっとも多くの事務所が使っている方法です。費用ゼロ・自由設計・学習コストほぼゼロ。項目設計と数式を工夫すれば、期限の自動計算までは十分可能です(具体的な作り方は無料テンプレート配布記事で全公開しています)。
弱点は明確で、自動で知らせてくれないこと。台帳を開かなかった週は、管理が止まった週です。また、顧客が増えるほど決算月起算の期限入力が手作業で積み上がり、属人化も避けられません。
2. 汎用CRM(Salesforce、HubSpot、Zoho等)
営業管理・顧客接点管理のためのツール群です。無料プランを持つ製品から1ユーザー月額数千円以上の製品まで価格帯は幅広く、メール配信や商談管理は強力です。
ただし、これらは「営業パイプライン」を管理する思想で設計されており、「5年後の更新期限」「決算月+4ヶ月の届出期限」といった法定期限の管理は標準の得意領域ではありません。カスタムフィールドとリマインダーで擬似的に組むことはできますが、業種別の期限ルール(建設業は満了30日前申請、宅建は90日前〜30日前受付、など)は全部自分で設計・入力することになります。
3. kintone(サイボウズ)での構築
士業界隈で採用例が多いのがkintoneです。ドラッグ&ドロップで顧客台帳・案件管理アプリを自作でき、通知機能もあります。
料金は執筆時点の公式サイトでライトコース1ユーザー月額1,000円、スタンダードコース1ユーザー月額1,800円(いずれも税抜)、最低契約10ユーザーからです。つまり1人事務所でも最低で月額1万円(ライト)〜1万8,000円(スタンダード)からのスタートになります。外部連携やプラグインを使うならスタンダードが実質必須です。
そして本当のコストは構築です。期限の自動計算・多段階リマインド・対応状況管理を自力で組むには相応の習熟が必要で、ベンダーに構築を外注すれば構築費・保守費が別途かかります。「作れる人がいる事務所」には強力な選択肢、そうでない事務所には過大投資になりやすい、というのが実態です。
4. 士業専用ソフト
行政書士向けに作られたソフトも存在します。公式サイトで確認できた代表例を挙げます。
- クリックス(行政書士向け製品群):「【建設業】.NET」「【建設業】クラウド」「【宅建業】」「【産廃収集】」など、業務分野ごとの申請書類作成ソフトを展開。産廃収集版には許可期限管理・車両期限管理機能が明記されています。顧客管理・請求管理は「報酬管理システム『侍』」が担う構成です。価格は公式サイトに記載がなく、要問い合わせです
- 俺の事件簿:行政書士専用の顧客・案件管理ソフト。顧客管理、案件管理、見積書・請求書・領収証の作成、行政書士法上の帳簿(事件簿)要件への対応、入金・売上管理をカバーします。価格は49,500円(税込)の買い切り型で、インストール型・30日間の無料試用が可能です。一方、公式サイト上では許認可の更新期限アラートのような期限管理機能は明記されていません
士業専用ソフトは「書類作成」と「帳簿・請求」に強い一方、顧客横断で更新期限・年次届出を見張る機能は、製品や対応業務分野によって濃淡があるのが現状です。導入前に「自分の主力業務の期限管理に対応しているか」を必ず確認してください。
比較表(費用・期限管理・アラート・案内文作成・学習コスト)
執筆時点(2026年8月)の各公式サイトの情報に基づく比較です。価格・仕様は変更される可能性があるため、導入時は必ず各公式サイトで最新情報を確認してください。
| 選択肢 | 費用の目安 | 許認可の期限管理 | 自動アラート | 顧客向け案内文 | 学習・構築コスト |
|---|---|---|---|---|---|
| Excel・スプレッドシート | 0円 | △ 数式で自動計算可・入力は手作業 | ✕ 自分で開いて確認 | ✕ | 低 |
| 汎用CRM(Salesforce・HubSpot等) | 無料プラン〜1ユーザー月数千円(製品・プランによる) | △ カスタム設計しだい | △ リマインダーで代用 | △ メールテンプレで代用 | 中〜高 |
| kintone構築 | ライト月1,000円/人・スタンダード月1,800円/人(税抜)・最低10ユーザー+構築費 | △ アプリを自作 | △ 通知設定を自作 | ✕ | 高(構築次第) |
| クリックス 行政書士向け製品群 | 要問い合わせ | ◯ 対応業務分野による(産廃収集版に許可期限管理機能あり) | 要確認 | ✕(書類作成が主) | 中 |
| 俺の事件簿 | 49,500円(税込)買い切り | ✕ 公式サイトに記載なし | ✕ 公式サイトに記載なし | ✕(請求書等は◯) | 低〜中 |
| 許認可期限レーダー(開発中・リリース前) | 月額5,980円(税込予定)・3ユーザーまで | ◯ 業種別期限テンプレートで自動計算 | ◯ 多段階(6ヶ月前〜)・複数宛先 | ◯ 下書き自動生成 | 低(登録のみの設計) |
※許認可期限レーダーは筆者が開発中の自社サービスであり、まだリリースされていません(先行登録受付中)。機能・価格は開発中の予定値です。この点を差し引いてご覧ください。
表から読み取れることは2つです。第一に、「顧客管理」を名乗るソフトの多くは、期限管理を主戦場にしていないこと。第二に、期限管理まで含めて自動化しようとすると、既存の選択肢ではkintone構築(最低月1万円+構築の手間)か、業務分野特化ソフト(価格は要問い合わせ)に行き着くことです。
「顧客管理」と「期限管理」は別物:事故が起きるのは期限のほう
ソフト選びで失敗する典型は、「顧客管理ソフトを入れたのだから期限も管理できているはず」という思い込みです。両者は設計思想が根本的に違います。
- 顧客管理(CRM)は「起きた接点」の記録です。いつ相談があり、何を受任し、いくら請求したか。過去から現在を向いています
- 期限管理は「将来の義務」の管理です。5年後の満了日、来期の決算変更届、経審の切れ目。現在から未来を向いています
そして事故は必ず未来側で起きます。実務で期限管理の仕組みに求められる要件を挙げると、次のとおりです。
- 決算月起算の期限を自動計算できること:決算変更届(事業年度終了後4ヶ月以内)、運送業の事業報告書(年度経過後100日以内)は顧客ごとに期限が違う
- 多段階で通知が来ること:6ヶ月前・3ヶ月前・1ヶ月前。1回きりの通知は「見たけど忘れた」で終わる
- 対応済みにするまで消えないこと:既読スルーを仕組みで防ぐ
- 複数人に届くこと:先生1人の頭とメールボックスに依存した瞬間、属人化リスクは解消されない
- 単発受任の顧客も対象に入っていること:新規申請だけ受けた顧客の5年後は、誰も見ていない
この要件を満たすなら、道具は何でも構いません。まずコストゼロで始めたい方のために、この要件を可能な範囲でExcelに落とし込んだ無料テンプレート(期限の自動計算式・色分け設定・週次運用ルールつき)を用意しています。→ 【無料テンプレート】行政書士の顧客・許認可期限管理Excel|項目設計と運用ルールを全公開
月額5,980円で期限管理に特化するという選択肢(自社サービス紹介)
最後に、手前味噌を承知で自社サービスを紹介します。
「許認可期限レーダー」は、上記の要件1〜5をすべて満たすことだけを目的にした、行政書士事務所向けの許認可期限・年次届出管理SaaSです。顧客と許認可を登録するだけで、建設業許可(5年・満了30日前)、決算変更届(決算月+4ヶ月)、経審(審査基準日から1年7ヶ月)、産廃(5年/優良7年)、運送(100日以内・7月10日)などの期限を業種別テンプレートが自動計算し、6ヶ月前・3ヶ月前・1ヶ月前・2週間前に先生と補助者へ自動アラート。顧客向け案内文の下書きまで自動生成します。料金は月額5,980円(税込予定)・顧客登録数無制限・3ユーザーまでの予定です。
正直にお伝えすると、本サービスは現在開発中で、まだ利用できません。現在は先行登録(無料・メールアドレスのみ)を受け付けており、先着50事務所には創業メンバー価格(月額4,780円・永年20%オフ)を適用予定です。「今すぐ使えるものが欲しい」という方は、まず上記の無料Excelテンプレートで台帳を整えてください。テンプレートはリリース時にそのままCSVインポートできる設計にしています。
先行登録・詳細はこちら:許認可期限レーダー サービス紹介ページ 先行登録フォーム(30秒・無料):https://tally.so/r/q4qvR9
まとめ:選び方の結論
- 顧客数30社未満・期限業務が少ない → Excelテンプレートで十分。ただし週1回開く運用ルールとセットで
- 書類作成・帳簿・請求の効率化が主目的 → 士業専用ソフト(俺の事件簿、クリックス等)を試用・問い合わせ
- 社内に構築できる人がいて、業務全体をシステム化したい → kintone(最低10ユーザー・月1万円〜+構築コストを覚悟のうえで)
- 許認可業務が主力で、期限の取りこぼしが最大のリスク → 期限管理特化の仕組みを別建てで持つ。当面はExcelテンプレート、リリース後は許認可期限レーダーという選択肢も検討材料に
許認可期限 管理テンプレート(無料)
建設業許可の5年更新、決算変更届、経審、産廃、運送の年次報告。顧客ごとにバラバラな期限を1枚で管理できるExcelテンプレートを無料で配布しています。
無料テンプレートを受け取る(30秒)メールアドレスのみ・クレジットカード不要
免責事項:本記事に記載した各製品の価格・機能は執筆時点(2026年8月)に各公式サイトで確認した情報に基づきますが、変更される可能性があります。導入検討時は必ず各社の公式サイト・問い合わせ窓口で最新情報をご確認ください。また、法令・期限に関する記述は執筆時点のものです。最新の取扱いは所管行政庁でご確認ください。